佐伯区湯来町にある「龍頭の滝(りゅうずのたき)」は名瀑ながら、人目につくことはほとんどない。
国道433号線から林道天上滝谷線に入り約1km上ったところに「龍頭の滝」の看板が出とるんじゃけど、この滝へと向かう歩道は至る所で劣化が激しく、普通の人間なら先ず入口で滝へと向かうことを諦めるじゃろう。
滝へと続く道は悪いんじゃけど、滝自体は非常に美しく、周囲が人間界と隔離されたようにも感じる不思議な空間となっとって、訪れた者を魅了してしまう。
一般の人も見れるように滝までの歩道を是非、整備しなおしてもらいたい。現状は危険じゃけん、この滝へ行くことはお勧めできん。
龍頭の滝へのアクセス
広島県広島市佐伯区湯来町大字麦谷
国道433号線から、水内川(みのちがわ)の支流の滝滝川に沿って上る「林道天上滝谷線」に入る。
「林道天上滝谷線」を約1km進むと「龍頭の滝」の看板があり、この看板のところを左に入っていくと滝へとたどりつく。
この看板がある付近の道路は広くなっとるけん、車が駐車可能じゃ。
「林道天上滝谷線」はこれより先で、がけ崩れ防止の為の工事をしとるけん通行止めじゃ。何年も前から岩肌にネットをかけて落石防止の処置をしとる。
いざ、龍頭の滝へ!
看板のところを入ってすぐ目の前の川にかかった橋を見ると、かなりボロボロでいかにもヤバそうじゃ。
対岸を見ると刈りはらわれたと思われるクマザサの切り口が見えたけん、ごく最近、誰かがここを通ったことは間違えない。
がっ、橋を渡ろうとした時、橋の下に何かぶら下がっとる棒が見えたけん、渡るのを辞めて川に降りて確認してみると・・・
なんじゃこりゃ?完全に空中でぶらぶらしとる。かろうじて針金一本でぶら下がっとるだけじゃ。
これは柱じゃったんか?それとも橋を補強する骨じゃったんか・・・
橋を渡らずに対岸に行くことも可能そうじゃったけどごく最近、誰かが渡っとるけんまあええかと思い、慎重に橋を渡って対岸へとたどり着いた。
橋を渡って対岸を進むとすぐに視界が開けた。じゃけど、ここからは道が全くわからん。
「川沿いに上っていく」と言う事前に調べた情報を元に、登れそうな場所を探す。下の写真の矢印のルートで藪に突っ込んで川の上流に向かった。
藪を抜けると今度は川の右手にルートをとり上流を目指して進む。
下の写真の矢印部には人(もしくは動物かも)の踏み跡があったけん、このルートで間違いないとホッとした。
苔が生えとって足元が非常に滑りやすいけん、淵に落ちる可能性も高い。ここに来るなら濡れてもええ夏じゃの。
しばらく(というても2,3分)川沿いを上ると、川が左に曲がっとった。
このまま滑りやすい川沿いを進むかどうか悩んどったら、右手の方に道の様なものを発見したけん、そっちへ行ってみる。
これは間違えなく道じゃの。「保安林」の看板を見て人の気配があることにホッとした。
川沿いの道を進んで行くと、倒木や落石が多く非常に歩きにくい。
しばらく進むと道は山の上の方へと登り、川から次第に離れ始めた。それから間もなく進むと道が崩落。これ以上、この道を進んでも滝へ行けるかどうかわからんかったけん、山の斜面を川まで降りることにした。
川に降りると小さな滝が現れた。これが「龍頭の滝」か?いや、写真で見たのとは全然違う。
この滝の左を巻いて更に上流へと上る。
川の水はかなり綺麗。
水量が少ないけん、川の中を歩いて登れる。とは言え、普通の靴じゃと濡れることは間違えない。
「龍頭の滝」はまだかの~?と少し不安になりながら進んでいると、大きな岩がゴロゴロした少し広い空間にたどり着き、そのすぐ右上に「龍頭の滝」が現れた。
岩の上へ這い上がると、滝の全容が拝めた。
これが「龍頭の滝」じゃ!
谷の中で少し広くなった空間にある「龍頭の滝」。真っすぐに落ちる水は、下に行くほどに広がり滝つぼへと流れ落ちる。
滝の全容を眺める為には、滝つぼの周りの大きな岩の上に登る必要があるんじゃけど、そうすると近すぎて俺のカメラでは全容を移すことが出来ん。
今までは超広角レンズなんか興味がなかったんじゃけど、この時初めて超広角レンズが必要と感じた。
滝つぼは結構広く、水も非常に綺麗じゃ。この日は曇りで、水面も常に波打っとるけん写真では解らんじゃろうけどの。
滝の両側は木々に覆われとる。
滝の周囲には人間の痕跡を感じさせるものが全くなく、滝つぼには”神”か”物の怪”でも住みついとって目の前に現れるんじゃないかと思うような神秘的で独特な空間じゃった。
しばらく滝の周囲におると、美しいこの空間にずっとおりたいという気持と同時に、何かに取り憑かれるんじゃないかという不安が入り混じった心境となり、次第に不安の方が大きくなってきた。
誰も来ないこんな山奥で、ここまでの美しい滝を見ると妙な気分になるもんじゃのう。
ネットで調べたところ、実は「龍頭の滝」は4段の滝からなる滝らしく、今回俺が見た滝は一番下の「下段の滝」じゃった。これよりさらに上の滝を見るためには、壊れて今にも落ちそうな吊橋を渡る必要があるけん、俺は行くのを諦めた。
ごく一部の無謀な人勇気のある人が果敢にも吊橋を渡り、「先の上段の滝」を写真に収めとるけん、それを見たかっらた「龍頭の滝 湯来町」とgoogle検索で探してみてくれ。
俺も一応、吊橋のとこまで行くには行ったんじゃけど(下の写真)、橋は完全に壊れて傾いとったけん、これを渡る気には全くならんかった。
自分自身、滝巡りをしとって変態の部類に入る人間じゃなと客観的に見て感じとったんじゃけど、この橋を渡った人がおるのを考えると、俺はまだまだ普通なんじゃのと考えを改めさせられた。滝見よりも命が大事じゃ!!
最後に
今回行った「龍頭の滝」は滝と滝つぼと周囲の空間がバランス良く、今まで見てきた滝の中でもトップクラスの感動を味わった。現地で感じた興奮と不安の入り混じった感情はとても言葉では言い表すことができんのう。
ただし、仮に滝までの道がきっちり整備されたらここまでの興奮はなかったかもしれん。
滝に着くまでは、道なき道を行き、歩道が崩落し、滝がどこにあるとも解らずに不安な気持ちを抱えながら川を遡っていった。そしていきなり目に飛び込んできた美しい「龍頭の滝」。心理的な吊橋効果もあったけんここまで感動したんじゃろう。
この滝に魅了された俺は、初めて「龍頭の滝」を訪れた1週間後に再度、滝を訪れた。
最初に滝に行った時は川の途中から山道へと上って行ったんじゃけど、今度は川を上って「龍頭の滝」まで行ってみることにした。
岩には苔も生えとって滑りやすく慎重に歩いた。防水の靴を履いとるけん、少々は問題なかったんじゃけど、歩ける場所が限定されてしまうけん、長靴で行くのがええじゃろうの。
川を遡ると「龍頭の滝」まであっという間にたどり着いた。入口から多分、15分くらい滝まで行けたと思う。1週間前に来たばかりの滝じゃったけど、やはり同様にその美しさに心を奪われてしもうた。
そういえば、この近所の「たらたらの滝」へ行ったき時も興奮と不安が入り混じった妙な気分になった事を思い出した。
「林道天上滝谷線」の落石予防の工事のついでに「龍頭の滝」の遊歩道も整備しなおしてもらえんかのう。
最後に、この滝への道のりは非常に危険じゃけん、現状は行くことはお勧めできんけんの。